【縁の下の力持ち】

「内科と外科の違い」ってなんだろう?
「外科医はメスを握る。内科は握らない?」

あのなあ、そんな杓子定規な答を僕が要求すると思うか?
「やっぱり違いますか?」
内科と外科の違いって、我々医師以上に患者さんの受け止め方って違うんだと思う。

確かに外科の先生は傷やけが、腫瘍など内科的な薬では治せない病気を治してくれる。
内科が手を尽くせない癌や重篤な病気や病態を治してくれる。
だから患者さんにとっては外科は病気を治してくれる救世主なのだ。

たとえばがんの診断に関して考えてみよう。
内科でいろいろ検査をして、「がん」の診断に至ったとしよう。
患者さんから言われることは内科では検査をして疲れた。
早く手術して治してくれと言われて、むしろ病気を見つけた敵役になることだってある。
患者さんにとっては手術をして治してもらったのは外科の先生で、内科医の僕らは感謝されることは少ない。

ある意味、病気を見つけた悪者なのさ。
でも、それは僕らの役割なのだからしょうがない。
我々の務めは外科医が安全に確実に手術ができるようにするための患者さんの病気を評価すること。そして手術のための設計図を外科医に提供すること。

かように内科は患者さんから感謝されることを望む科ではない。
治療をして挙げられたと充実感を味わえる科でもない。
でも、いろいろな工夫や努力をして、小さな治療できる食道がんや胃がん、膵臓癌などを診断するとき、僕だからこそ、この病気を見つけてあげられたと自己満足に陶酔に浸ることがある。もちろん、僕らが診断してあげたからと恩着せがましく言うつもりもない。
でも僕はそのことに喜びと充実感を持てると思っている。ある意味そのことに喜びと感じるのが内科であるのかもしれない。
そういうことに興味を持てる医師が内科を選べばいいのさ。

これは内科だけだと思っていたら、ある時救急の先生も同じようなことをおっしゃっていた。
意識不明で救急車で運ばれてきた患者を一生懸命蘇生をした。
それが腹部大動脈瘤で、心臓血管外科の医師に引き継いだ。
手術がうまくいって、退院する時に、患者さんが救急によって「お世話になりました。おかげさまで、元気に帰れます」とあいさつに来ることは皆無。意識もなく、どこに運ばれ、誰に手当てしてもらったのも不明。意識が戻った時の主治医は胸部外科。救急の医師に診てもらったことすら覚えていないのだ。
でも彼らが、労いの言葉を要求しているわけではない。救急の門番を務めるのが我々の仕事。
あのときの患者さんが元気で退院したということを聞けることが我々の慰みになるのだと。

病院にはいろいろな医師がいる。
外科はある意味花形のエース。
内科や救急などはさしずめ縁の下の力持ちといったところかな。
でも、それぞれの役割分担がある。お互いが補い合って、「病院」が機能するのだ。
我々は縁の下の力持ちではあるけれど、気持ちとしては病院の屋台骨だというつもりで働いているのさ。

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