【言葉は諸刃の刃】

このCTの所見は大動脈周囲のリンパ節が腫大しているので、慢性胆嚢炎ではなく、胆嚢癌を考えた方がいいんだ。

「えー、うっそー」
・・・あのな、なんで指導医の僕が君に嘘をつかなけりゃならないんだ。君に教えてあげているんだから、感謝されこそすれ、その言い方はないんじゃないか?
「え、いやあの、すいません。ついつい癖でごめんなさい」
って、怒っているわけじゃあないんだけどさ。いつもそう言っているのを聞いているから、口癖なのはわかるよ。
研修医の中には「ホントですか?」なんて言ってくる輩もいる。言葉尻をとらえるようだけど、よく考えてごらん。実はすごく失礼な言い方でしょ?たぶん言っている方は「知りませんでした」の婉曲表現のつもりなんだろうけど、言われる方は教えてあげているのに・・・って思うわけですよ。
でも実際に、社会経験豊富な患者さんが初対面の若造にそう言われたら、どういう気持ちするだろうな?
「そうですよね」
それは即ち、君の気持ちの中でまだ学生気分が抜けていないんだと思う。研修医もいっぱしの社会人なのだという自覚に欠けているのだと思う。

医療において「言葉」はとても大切なのさ。「言葉」は薬にも癒しにもなれば、ときに針にもメスにもなるのさ。
ぼくが目上だと偉ぶるわけじゃないけれど、社会人の常識は持ってほしいと思う。一回は注意するけど、何回も言わなければ直せないようでは使い物にならない。大人なんだから、自分が直さなければならない大切なことは一回で修正しなくてはいけないよ。
何気ない君の言葉で患者さんが深く傷つくこともあるかもしれない。そのことを言わない人もいるだろう。むしろ言わない人の方が多いんじゃないかな。Silent majorityだと思う。でも、そのことを自覚することが大切なのだ。
言葉はその人の考え方そのものだ。表現が不適切であれば、その人の考え方そのものが稚拙であるということだ。勘違いされてそういうつもりじゃなかったんだけどといっても、仕方がない。勘違いされないような配慮が足りないだけなのさ。
だから医学の勉強も大切だが、本を読んだり、新聞を読んだり、文章を書いたり、世間一般で言う常識をちゃんと身につけることが必要になるのさ。医学は理系人間が多いのだけれど、実際勤務していると文系の仕事の要求がかなりある。それは実感しているだろう?
「はい」
だからこそ、自分を磨く努力をすべきなのさ。
ここだけの話だけど、医者の世界にはちょっと変わり者が多いんだよな。
一般社会でも「一風変わった人」は5%ぐらいはいるのだろうけど、医者の中では20-30%ぐらいはいるような気がするよね。でも、これ僕だけの感想じゃないからね。僕はいつもMRさんにも同じ質問をするようにしているんだけど、たいていの人は噴き出しながら「そんなことは私の口からは言えません」って言いながら肯定してくれるからね。
君もその20-30%に入らないでくれよ。
西野に教わった研修医にはそう言われることは許さないからね。

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