消化器内科って言ってもいろいろな患者が来るだろう?
「ええ、びっくりしました」
消化器内科は「病院の玄関」なんだ。
さっきの方も「お腹が痛い」で来たけど、結局卵巣捻転で手術でしょ。あの方が初診で婦人科を受診するっていうのはある意味不自然だよ。やっぱり最初は消化器内科に受診するのが妥当って気がするよね。
患者さんは自分の病気のことを理解して来るわけではない。「調子が悪い」から来るわけで、どこが悪いのか、どの科にかかるべきなのかもわからないことが多い。
初診時に迷うとき、まずは消化器内科ってことになるのさ。宴会で最初に何にするって聞かれたら、まずはビールって言うのと同じ感覚?ちょっと違うかな?
「先生、それって親父ギャグですよ」
・・・だから、こちらは消化器ですから、あなたは診れませんではすまされないのさ。
どんな訴えでもまずはきちんと診察して、ある程度の診立てをしてその診療科に紹介する振り分け係も務めなければならない。だから、消化器内科は一般内科を兼ねなければいけない。だからこそ大変なのさ。
だって、僕の患者さんを見ればわかるでしょう?消化器の患者は2/3くらい。あとは高血圧、脂質代謝異常、糖尿病。本当は他の科の先生に診てもらった方がいいような患者さんが結構いるでしょ?でも最初に診てもらったからって、そのまま継続で診ちゃうことが多い。だから、患者さんが増えちゃうんだよね。
でも外来では消化器の疾患って一番多いから、やっぱり消化器ががんばらなければだめなんだよね。癌で考えても消化器癌は大腸、胃、膵臓、胆管・胆嚢、肝臓、食道これらに加えて卵巣や腹水を主訴に来る癌の患者さんを合わせると全癌の2/3ぐらいにはなっちゃう。だから、より早期に癌の診断をするためには他の科の通院患者さんでも年一回の採血、胃内視鏡、超音波、加えて腹部CT、大腸内視鏡なんかをfollow upしてあげないとだめなんだ。
患者さんは大きな病院や大学病院に通っていると単科にかかっているだけなのに、体のことはすべて診てもらっているような気になるみたいなんだよね。だから、脳外科にかかっている方が胃がんで手術をしなければならないときに、「どうしてもっと早く見つけてくれなかったのか」って言われることがあるみたいだよ。医師側からすればそれは理不尽な申し立てに思うけど、一理ぐらいはあるかもしれないね。
だから、消化器内科はon demandで診るだけではなく、検診を兼ねた介入診療をしていかなければいけないんだよ。ま、すべての消化器内科医がそう思っているかどうかは定かではないけどね。