【愛の鞭】

僕は「患者様」なんて絶対いわないよ。

かえって他人行儀になるじゃない。でも、僕は患者さんをよくしてあげたいと思っている。
いい医療は患者さんとの距離感を詰めなければできないと思う。
だからこそ、治療目標を守れない患者さんに対しては怒ることにしている。
糖尿病や脂質代謝異常の患者さんが体重を増やしてきたら、一喝しちゃうもんね。
自身の健康を守るための約束は守ってほしいもんだよね。
でも顔は笑っているんだけどね。
そのとき患者さんはどうすると思う?
たいていは自分が悪いことを理解しているから「ごめんなさい」だよ。
僕は患者さんと約束しているんだ。法律的には医療は書面はないけど契約とみなされるらしいけど。
BMI30以上の方は毎日体重計に乗ってもらってグラフをつけてもらう。
上がり下がりはあっても、がんばれば月500gぐらいは減らすことはできる。
ちょっと気を許すと一日で戻るけどね。
だから、継続が大切なんだ。
最近よくメタボが話題になるけど、君は説明できるかい?
「腹囲が男性で85cm以上なら・・・」
ブッブー!

正解は高血圧、糖尿病、脂質代謝異常の三つのうち二つを持って、かつ腹囲が男性で>85cm、女性で>90cmの方が、相当する症候群。
でもこんな話を患者さんに言っちゃだめだよ!
そんなこといわれてもピンとこないだろう?
患者さんには具体的な目標を持たせて上げなくてはならないんだ。
50歳のあなたが今の血圧で、血糖で、体重を維持すると5-10年後に心筋梗塞や脳卒中で倒れるかもしれない。命を失わないまでも、日常生活に支障を期待したり、自由を失うことになるかもしれない。
僕の説明はこうさ:
想像してみてください。70歳のあなたがベッドで横たわって、お孫さんを目で追うだけ、食事も下の世話も人の手を借りなければできない。そんな老後を思い描いてみてください。
今なら、予防することはできるんです。今からがんばらなければ元気な老後は得られないんです。
おいしいものが目の前にあればついつい箸がすすむのは人の常。年末年始宴会も多いし、食卓も誘惑の多くなる季節ですよね。家族の方がそれを止めることもないでしょう。でもだめなんです。それ以上食べてはだめ。自分の気持ちに歯止めをかけなければ、健康はけっしてあなたにやってこない。
メタボはやせましょうというキャンペーンではありません。
10-20年後に心筋梗塞や脳卒中で倒れないように今から予防策を講じましょうというキャンペーンなんです。
どうだい?
「うまいですね、先生。でもさっきの患者さん泣いて出て行きましたよ」
ああ、でもきっと二ヶ月先は-1Kgを達成してくれるよ。本当に憤慨して泣いて出て行ったのなら二度と診察には来ないだろうけどね。
だって、僕だってどうでもよければ患者さん一人に30分も時間をかけてこれだけの説明はしないよ。自分の健康を守るために真剣に向き合ってほしい。だから、もっとがんばらなきゃって諭しているのさ。だから、僕の言葉は患者さんを傷つけてはいない。勇気付けているだけなのさ。
泣いているのは怒られたからではない。自分の不甲斐なさに気付いているからなのさ。
あの方にこれだけ真剣に説得するのはたぶん世界中で僕しかいないと思うよ。
僕が診る患者さんには「よくなりたい」って思ってもらいたいのさ。
「でも次もよくなっていなかったらどうするんですか?」
どうすると思う?もうあなたのことは診ませんって宣言するんだ。約束を守れなければね!
医師法第19条第1項に違反するかもしれないけどね。
僕の診察を希望するなら、がんばりなさいって。
でも、次にはしたり顔で診察に来るんだよ。
やればできるのさ。

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