質問。医療はサービス業だと思うか?Yes or No?
「よくわかりませんが、違うような気がします」
そのとおりだ、医療は決してサービス業ではない。
僕は研修医には必ずこの質問をするのだけれど、違うという人はほとんどいない。
君はなかなか気骨があるじゃないか!
人前で言う時にはサービス業だと言ってもかまわない。でも、心の中でそんな事を夢にも考えてはいけない。
医療は人の命を扱う専門性の高い、尊い職業で、誰でもできることではない。年収3,000万円を超えるカリスマ美容師や何億という売り上げを上げるIT関連の社長さんと同じにされてはたまったものではない。我々医師は彼らの何分の一の給料しかもらわない。特に勤務医は一日の勤務時間は軽く12時間を越える。開業医と比較しても仕事量は格段に多いのに収入は随分少ない。サービス残業もあれば、当直もあり、夜間の呼び出しもある。学会のまとめや講演もある。平均すると週90-100時間ぐらいは働いているよ。慣れてくるんだけどね。
でも、我々はこの職責を投げ出すこともなければ、不満に思うこともない。なぜだと思う。
「責任感・・・ですか?」
そのとおりだ。使命感と置き換えてもいい。他の誰にでもできる仕事ではない。我々にしかできない。患者さんから頼られている。その付託に応えなくてはならない。その責任感が我々をつき動かしている原動力なのだ。少ない給料や長時間労働に不満のある人、責任感の重圧に押しつぶされそうな人は職種を代えればいいだけさ。
医療は難しいことではない。相手の気持ちになって「してほしいと思うこと」をしてあげればいいだけなのだ。自分の親や親戚にならこういう診断や治療をしてあげたい、それを実践すればいいだけなのだ。それをサービス精神って言い換えても悪くはないだろう?
医療はサービス業ではなく、サービス精神をもってする仕事なのさ。