消化器科を選択した理由
大学を卒業した直後は神経内科を専門にしていきたいと考えていました。
当院を初期臨床研修として選んだ理由も、脳血管障害を含めた神経疾患の症例が豊富であったためです。しかし各科をローテート研修するにつれて、どの分野も非常に興味深く、やりがいを感じました。改めて神経内科も魅力的な分野であると感じました。しかし、各科で共通して感じたことは、消化器疾患は科に関係なく、高い頻度で発症し、しばしば各科からコンサルトされることが多いということでした。消化器科の先生方は各科の患者さんの様々な疾患に対し対応されていました。
学生の頃は消化器科に対し苦手意識をもっていました。内視鏡検査、腹部造影CTを行えば大部分の疾患について容易に診断ができると思っていました。そのため診断する過程に対し魅力を感じませんでした。しかし医師となり、実際に患者さんを診療するようになると、消化器疾患に遭遇する頻度が高く、対象とする臓器・疾患が多いことに気が付きました。腹部を診察することはまるでブラックボックスを探るようであり、想像力をかきたてるものでした。そのような考察後に行われる検査は本当に興味深く感じられました。
打腱器を用いて身体所見をとり、鑑別疾患を絞り、検査方法や治療方針を決定していくことも大変興味深いことですが、腹部を触診し、腹部の臓器をイメージし、検査・治療を考えていくことも同じように魅力的であります。また消化器科では内視鏡や超音波機器を用いた侵襲的な処置を行うことも多く、知識や経験だけではなく技術についても学ぶべきことが多いです。
現在の研修状況
当院消化器科は完全主治医制となっています。現在私の受け持ち患者は5人程ですが、そのほか指導医と共同で受け持っている患者が10名程いるため、合計15名ほどの入院患者を受け持っていることになっています。
午前7時半から病棟回診を開始し、9時までに病棟指示を出します。午前は上部内視鏡検査、午後は下部内視鏡検査、ERCP、PTCD等の処置になります。外来が週1-2回あり、この他に入院患者さんの処置や病状説明を適宜予定していきます。週に1回内科外科合同カンファレンスがあり、外科治療のコンサルトを行います。これらの業務が終了後、夕回診を行い、病棟患者さんの追加指示を出し終えて、1日の業務が終了します。治療方針や読影・診断に苦慮する場合や、検査・処置で困難な症例に遭遇した場合は、すぐに指導医に相談できるような体制となっています。院内における研修内容も充実しておりますが、このほかに,学会発表を数多く行うことで院外においても技術や知識を深めて行くことができます。
上部内視鏡検査は年間約10,000例、下部内視鏡検査は約3,000例、ERCPは約300例と検査症例は豊富です。外来患者数も多く、学会で症例報告したい症例も多く経験します。初期臨床研修が終了し、自分一人で解決しなければならないことが多くなりましたが、まだ後期研修医1年目と経験が不十分であり、癌を見逃していないか、外科治療が必要であるか、緊急で外科コンサルトの必要であるか判断が難しいことが多く、緊張から解放される時間が少ない日々が続きます。しかし、そのような状況下でも適切な診察・加療が行えたとき、大きな達成感と充実感が得られます。
消化器科 後期研修医 Y.T